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連載 京都を美しく撮ろう 水野克比古&水野秀比古
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連載第5回 桜を撮るⅠ

梅の香を楽しみながらも季節の歩みは着実に進み、いよいよ桜シーズンの到来が目前に迫っている。洛中洛外を問わず市内各所が桜色に染まり、カメラを片手にどのルートで名所巡りをはじめようかと心が躍る期間だ。撮影にあたっては、早朝や夕刻など人出の少ない時間帯に出かけることや、マクロ的に花のアップを撮らず広い空間を撮ること、晴天を避けて光線の柔らかい曇天や雨天で撮った方が良いなど、これまで説明してきたポイントがそのまま基本として活用できる場面が多い。加えて、桜を撮る際に注意するポイントとしては、花を白トビさせないように写すことが重要だ。その点をふまえながら説明を進めていくとしよう。

質感の残る明るさで撮る|仁和寺
仁和寺
  • 紅葉と桜、反射率の違い

    紅葉は赤色か黄色がほとんどであり日光の反射率もそれほど高くはないが、桜は反射率の高いものが多い。紅枝垂桜など赤色系のものでも意外と反射率が高いのだが、染井吉野など白色系の反射率は強烈だ。直射日光の下で撮るとコントラストが強すぎたり、花弁が白トビしてしまって質感が損なわれ、白く塗りつぶしたような描写に陥りやすいことを覚えておこう。

    白色系の桜の撮り方

    花弁を白トビさせないよう、少し暗めの露光で写す。

    • 白色が同化しない背景を選ぶ。
    • ▼建造物を背景に撮る場合は、朱塗りの本殿や鳥居、黒色系の伽藍など、濃い色をバックに桜の存在を浮かび上がらせる。
    • ▼空を背景に写す場合は青空で、なおかつ被写体に当たる日差しが弱まった瞬間がベストタイミング。曇天や雨天が背景では白い花弁が空と同化してしまい、桜の存在感が薄れてしまう。
    空の青さを強調する

    カメラによっては、PLフィルタという薄いガラス板をレンズの前に装着できるものがある。これは偏光フィルタとも呼ばれ、光の表面反射を除去する効果がある。大気中の水蒸気による反射をカットできるため、色彩やコントラストが強調され、抜けるような青空と桜花とのコラボレーションを演出できる。なお、太陽を背にしている場合や、逆光の場合は効果が現れない。

仁和寺の御室桜を撮る
  • 作例は仁和寺で撮影。近景に桜の枝を大きく、中景に御室桜の群生を、遠景に五重塔を配置した「三層型立体構図」で奥行きのある立体空間を写した。

    • 空の部分を桜で埋める。
    • ▼空の面積が多すぎると、間が抜けた構図になってしまう。
    • ▼爛漫と咲き誇る枝ぶりを探し、空の部分に構図して間を埋める。今回はこの枝が近景となって桜の存在感を強調している。
    • ストロボで明るさを補う
    • ▼近景の桜は逆光気味で光量が不足していたため、ストロボを光らせて中景の桜に近い明るさになるようにしている。
    • ▼逆光や日陰になっている花弁に明るさを補えば、画面全体の光量をバランスの良い状態にできるので、基本的なテクニックとして覚えておくといいだろう。
    • ▼ただし、ストロボ光が強すぎると花弁や枝ぶりが光りすぎて不自然になってしまう。ストロボの発光量を調節したり、発光部にトレーシングペーパーなど薄い紙をあてるなどして、自然な明るさで写るように心掛ける。
    • 編集部担当者がコンパクトデジカメで試してみた!!
石庭に桜を添える|龍安寺
龍安寺
  • 広い空間として撮る

    どこの桜か分かるように、花のアップではなく景色としての空間を撮影するのが、京都らしい写真を撮るコツだ。
    私の場合、撮りたい場面に出会ったときはワイド(広角)・標準・ズーム(望遠)の3つの広さ(空間)を撮っておくことにしている。また、可能な限り縦構図と横構図を撮っておく。被写体が花の場合はマクロ的にアップを撮ることもあるので、1シーンで8パターンを撮影することになる。

  • 作例では広角レンズを装着して横構図でワイドに撮影

    絞り値を上げて、手前から奥まで全体にピントが合うようにしている。
    石庭や油土塀に画面の下2/3ほどを割き、上1/3に桜を配置している。画面構成の大半は石庭となり、遠景の紅枝垂桜が春のよそおいを添えている。人の手による造形美と、桜花の自然美とが、広々とした空間のなかで調和している様子を意識してシャッターを切るといいだろう。

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